病気やケガ>骨癒合不全(こつゆごうふぜん)
骨折の治癒機転が正常に起こらず、骨の癒合(離れていた組織が付着すること)が不完全な状態で停止してしまうことを、骨癒合不全といいます。
骨癒合不全はさまざまな要因で発生しますが、骨折の治癒・管理が不適切な方法で実施された場合が最も多い要因となっています。
骨の癒合が得られるまでの期間(約2 週間~ 1 ヶ月間隔)で定期健診を行い、視診(骨折した足が着地できるかどうか、皮膚の色調、歩行時の跛行・負重状態)、触診(患部の腫脹・疼痛の有無、異常可動性の有無、正常な足との筋肉量の比較)、レントゲン検査(仮骨の増生の有無、骨吸収像の有無、スクリューが抜けていないか、プレートの規格が適切であるかなど)を総合的に評価し、治癒過程に異常がないかを判断します。
小動物外科領域では、罹患症例の年齢と治療方法による治癒期間が一般的に知られています。 (下記表参照)この治療期間を超えても骨折の治癒が不完全な症例に関しては他動物病院から紹介 されることもあり、主訴と治療経過およびレントゲン写真等で診断することもあります。
治療法は、不適切な固定状況の解除(プレートやスクリューの除去、髄内ピンの除去など)、骨 折の治癒を遅延させている基礎疾患や感染の除去を実施した後、外科的に適切な治療を行います。 その後の基本的な治療方針としては、骨折した部位の安定化を行い、その動物本来の治癒能力を最 大限に活かせるような内因性の環境を整えてあげることに尽きます。
骨折部の安定化の多くは骨スクリューと骨プレートによる固定(症例参照)を実施しますが、そ の他にも、創外固定法や髄内ピンとワイヤーの併用などを用いることもあります。また、骨の癒合 に関わる内因性の環境の整備としては、骨髄腔内からの血流を確保する目的でドリル等で骨髄腔の 再形成を実施したり、欠損した骨および骨幹軸の太さの再建のために自己海綿骨移植(自分の海綿 骨を骨折や骨の欠損部位へ移植する方法)の実施、および塩基性線維芽細胞成長因子(FGF-2) による骨の形成を促進させるような方法をとっています。