病気やケガ>門脈体循環シャント(もんみゃくたいじゅんかんシャント)PSS
門脈(腸管から肝臓への血管)の途中から異常な血管が形成される病気です。正常な場合は、肝臓で血中の有害物質を除去してから全身循環へ流れますが、門脈体循環シャントの場合は、有害物質を含んだ汚い血液が全身に回ることでさまざまな臨床症状がみられます。
先天性のものと後天性のものに分類され、さらに異常血管がどの血管とつなかって(シャントして)いるかによって、以下のように分類されます。
肝外シャント ─ 小型犬や猫でのPSSでは肝臓より後ろで異常血管が形成される肝外シャントが多くみられます。
肝内シャント ─ 大型犬でのPSSでは肝臓内で異常血管が形成される肝内シャントが多くみられます。
また、PSSの疫学的特徴としては以下のようなことがわかっています。
※これらの臨床症状は食後に顕著に現われることが多い。
診断は上記臨床症状に加え、下記の症状についても総合的に診断します。
治療法は内科的治療と外科的治療に分かれます。内科的治療はアンモニアなどの有毒物質が原因で起こる症状の緩和によりQOLやある程度の延命を目的とするため、完治は期待できません。 完治や長期延命を望むのであれば外科的にその異常血管を閉鎖させ、正常な血行動態に戻してあげることが必要不可欠となります。
しかし、すぺてのPSSで外科的治療が適応となるわけではありません。肝不全が末期的ではないこと、異常血管が閉鎖可能な場所にあることなどいくつかの条件がそろって初めて適応となりますが、基本的には早期発見し、若い年齢(1歳末満)で手術を行った方が予後は良いように思います。外科的治療法として、異常血管の閉鎖方法はいくつかありますが、どの方法でも通常のモニターリング(心拍数、血圧、体温など)に加えて門脈血圧の測定、門脈造影および肝生検を実施します。これらを実施することで、より安全な手術と正確な術後管理を行っています。
予後は外科的治療適応症例では、肝外性で9割、肝内性で7割の成功率であるとされてます。術後合併症としては、麻酔の影響、脳障害、血行動態の急変に耐えられない、などが起こり死に至ることもあります。