病気やケガ>股関節形成不全(こかんせつけいせいふぜん)


症例1
症例2
症例3
三点骨盤骨切り術(TPO)

股関節形成不全(こかんせつけいせいふぜん)とは?

股関節の形態的(解剖学的)な異常を伴う遺伝性疾患です。主な症状は後ろ足のふらつきや関節炎に起因する運動障害がみられる場合もあれば、ほとんど症状がない場合もあります。
股関節形成不全が原因でおこる関節炎が進行すると、変形性関節症を発症します。変形性関節疾患は進行性の病気であり、 何もしないとどんどん悪化し、完治は難しくなります。

発生率が多い犬種

大型犬~超大型犬に多発
ラブラドール・レトリバー、ゴールデン・レトリバー、ジャーマン・シェパード、バーニーズ・マウンテンドッグ、秋田犬
※小型犬種でも起こりますが、症状を示すことはあまりありません。

生後4 ~ 12 ヵ月の若齢犬で症状を示す

生後4ヵ月から1年未満の成長期には骨格が急成長します。 このため、股関節形成不全の犬は骨と筋肉のバランスがとれず、 関節の緩みが生じ、やがては股関節亜脱臼による関節炎が起こり、痛みを感じるようになります。

股関節形成不全の犬の約9割が両方の股関節に異常がある!

股関節形成不全になるかどうか、症状が出るかどうかは遺伝因子が7割環境因子が3割
環境因子としては急速な体重増加、食餌、後肢の筋肉量などです。肥満には気をつけましょう。

飼い主さんが気付く異変(臨床症状)
  • 歩き始めに、こわばった歩きかたになる
  • 散歩の途中で座り込む
  • 走るのを嫌がる
  • ジャンプをしなくなる
  • 階段の上り降りを嫌がる いずれも股関節形成不全による関節炎から生じた痛みのために取る行動です。

2007年度より動物保護法に基づく飼い主の「同意書」の記入が義務付けられました。お手数ですが、同意書に飼い主様の署名と緊急連絡先をご記入いただくこともありますがご了承ください。※当院で扱えない動物はお断りする場合があります。

その他の特徴的な臨床症状
  • ウサギのように後ろ足をほぼ同時に蹴り出すような走り方(ウサギ様跳躍)
  • 腰を左右に大きく振りながら歩く(モンローウォーク)
  • 頭を下向き加減にして歩く
  • 歩幅の短縮などがあげられます。
診断と治療法

上記臨床症状に加えて、歩様検査、関節可動域などの整形外科的検査に加え、×線検査によって総合的に診断します。また、治療法に関しては以下の内容を考慮し、その状況にあった治療法(内科的および外科的治療法)を飼い主さんとともに考えていきます。

  • 股関節の「緩みの程度」と「関節炎の有無(程度)」
  • 犬種による運動量
  • 飼い主さんが期待する機能回復の程度
  • 体重、年齢

症状が軽度であれば、進行防止を目的に内科的治療を実施します。場合は外科的治療も視野にいれて検討します。

内科的治療法
  • 消炎鎮痛剤
  • 関節軟骨保護剤
  • 食餌療法:体重増加防止
  • 運動制限:フローリング禁止(絨毯などを敷く)、高いところからの飛び降り禁止
外科的治療法
  • 三点骨盤骨切り術(TPO)(若い犬で実施)
  • 転子間骨切術(若い犬で実施)
  • 若齢期恥骨結合固定術(若い犬で実施)
  • 恥骨筋切除術
  • 股関節全置換術

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